「なぁルシオラ…俺はどうしたらいいと思う?」
横島は一人、東京タワーの展望台の上で今は無き愛しい人に疑問を投げかける。
返事は無い。
「はぁ」
解かってはいたが虚しさが込み上げてくるだけであった。
彼の悩みの種はルシオラの転生についてである。
結果のみで考えるのなら横島はすぐに実行するであろう。
しかしその方法に問題がるのだ。
『自分の子供として転生させる』という方法に…
「ほんと、どうすりゃいいんだろうな…」
今まで何回と繰り返してきた自問自答であったが答えは出ない。
「転生…させてあげればいいんですよ」
横島の後ろに立つ女性から答えが挙げられる。
「なっ!?」
横島は驚き後ろを振り返った。
その驚きには急に声をかけられたことに対するものとその内容に対する二つが含まれていた。
「もうっ、探しましたよ。事務所にもアパートにもいないんですから。もしかしたらって来てみたらアタリでした」
「小竜姫さま…」
横島のリアクションを気にせず話かける小竜姫。
「転生させてあげるって…」
横島は依然として驚きの表情をしている。
「横島さんが気にしているのは相手の、産む人のことですよね…? 私が産みます」
「はぁ!?」
横島が素っ頓狂は声をあげる。
「横島さんの妻、私では駄目でしょうか?」
小竜姫は本当に寂しそうな顔をしている。
「そっ、そんなことはないです! でも…俺はルシオラのことを…」
そう言いながら横島は小竜姫に背を向けると膝を抱え座り込んだ。
「かまいません」
小竜姫が横島に後ろから膝立ちになって抱きつく。
「かまいません…私は貴方のことを愛しています。それだけではいけませんか?」
小竜姫の手が温もりが横島を優しく包み込む。
「小竜姫さま…」
「横島さんの愛はルシオラさんが産まれてからきっちり奪わせてもらいますし…」
そう言ってニッコリと、自信たっぷりに微笑む小竜姫。
「・・・・・・・」
すこし唖然とした横島だが反対に小竜姫の手を握ると一言つぶやくように言った。
「小竜姫さまは強いですね…」
「えぇ、恋する女は何よりも強くなるんです」
どちらからとでもなくキスをする。
女はその愛を伝えるために。
男はその愛を受け取るために。
長い、長いキスを…
2003/03/09 「夜に咲く話の華」小ネタ掲示板にて掲載
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