*
オレまに

ドガッ


バキッ


ガッッ



暗闇の森の中、何かを打ち付ける音だけが響いている。
横島は文殊で作った自分の影と戦っていた。

「どりゃああーーーーッ!!」

ボフッ

影が飛びかかってきたところを栄光の手で串刺しにする。
胸を貫かれた影は音を立て消滅した。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

腰をおろし、息を整えている横島に背後から近づくものがあった。

「誰だ!?」

横島は息も整わぬ内にすぐさま臨戦体制をとる。
すると近づくものは諸手を挙げて暗がりから姿を現した。

「久しぶりだねぇ。横島」
「グーラー!?」


―――――――――――――――

「Home」

―――――――――――――――


「いやービックリしたよ」
「すまないねぇ。驚かすつもりはなかったんだよ」

今、二人は山小屋の中で暖炉を囲い紅茶を飲んでいた。

「どこに行ったのかと思ったら、こんなところで暮らしてたんだな」
「あぁ、都会はアタシらには住みにくくってね。アンタはあんな所で何してたんだい?」
「俺か? 山篭りだよ」

横島は苦笑しながら理由を述べた。

「そうかい…」

その表情から何かを読み取ったのだろう、グーラーは理由を聞くのを止めた。

「…この紅茶、美味いな」
「あぁ、最近凝っててね。そう言ってもらえると嬉しいよ」

グーラーは人を食べるのを止めた。
そのため人間と同じような食事を摂るようになった。
しかし人を食べるほどの満足感は得られなかったのだろう。
そこで人間と同じ食事で満足できるように料理やなんかに凝っているようだ。
その証拠に質素な山小屋の中、唯一台所用品はきっちりと揃っていた。

「夜食…食べるかい?」
「作れるのか?」
「料理も凝ってるんだよ」

グーラーはそう言うと台所へと消える。
それから二人はグーラーが作った夜食を食べて、朝が来るまで語り合った。
語り合ったと言うよりも横島の話にグーラーが相槌を打つの繰り返しであったが…
そして朝…

「山を降りるのかい?」
「あぁ、仕事もあるからな…」
「そっか」

グーラーは一瞬だけ寂しそうな顔をする。
だが直ぐに笑顔になって横島に告げる。

「アタシは、文殊なんか無くてもアンタの事…好きだよ。
 何に苦しんでるかなんて、アタシにはわかんないけど。
 傷つき、疲れたら…ココに来な…いいや、

 帰っておいで」

そして、

ぎゅっ

横島に抱きつく。
きつく、きつく…

「私の隣はアンタの、アンタだけの場所だ。いつでも帰ってきていいよ」
「「んっ・・・」」

ディープキス
最初は戸惑っていたが積極的なグーラーに徐々に、横島自身も舌を絡めていく。
長い間、二人で抱き合っていた。
横島とグーラーは余韻を残し離れる。
二人の間には光る糸が残っていた。

「「・・・・・」」

二人は無言のまま…
横島はグーラーに背を向け下山し始める。
その横島に向けてグーラーが笑顔で、

「いってらっしゃい!」

横島は背を向けたまま片手を挙げ、そこから走って下山していく。
グーラーはその指を唇に当て、横島の背を見送っていた。

いつまでも…





2003/03/10 「夜に咲く話の華」小ネタ掲示板にて掲載

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