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オレまに
〔香里の思い〕後編




「・・・・・・」

さっきから栞が相沢君を引っ張ってショウウィンドウ回りをしている

ズキッ!

でも、ハッキリ言ってこれ以上一緒にはいられない

今にもこの思いを栞と、相沢君にぶつけてしまいそうで…


〔香里の思い〕後編


「こんなことなら来るんじゃなかったわ」

「ん、何か言ったか?」

「なんでもないわよ」

…偽りの笑顔…

これから私は、この笑顔を何度繰り返せばいいのだろう

「あ、これなんか可愛いです〜」

「ん〜、女の子の服は良くわからんな」

「何言ってるんですか。そんなことじゃダメですよ」

「ダメなのか!?」

ふふっ、大げさなリアクション…それに優しい笑顔…

「ダメです〜!」

栞もあんなにホッペを膨らませて…

ズキッ!(もぉ、止めてっ!)

・・・・・・・

限界…

「栞、中に入って見てきなさいよ」

「ん〜、そうですね。そうしますぅ」

「ほらっ、相沢君も行くのよ」

「…俺にこのファンシーな店に入れというのか…? 香里が行けばいいじゃないか」

「私は用事を思い出したからここでお別れよ」



二人とも、嘘をついてごめんなさい

明日からはこの間までの香里に戻るから…

今日だけは…ごめんなさい…

「むぅ、仕方がない。覚悟を決めるか」

「えぅ〜、残念です。お姉ちゃんにも見てもらおうと思っていたのに」

「ごめんね、栞」

「用事があるならしょうがないです。じゃぁ祐一さん、行きましょう」

「あぁ」

「お姉ちゃん、バイバ〜イ」

「じゃあな、香里」

「またね…さようなら、相沢君

私はお別れを言い終わるとすぐに向きを変えて歩いていく

それからの二人は振り返らなかったからわからない

私は商店街の外れまでくると走った

目的もなく、ただ闇雲に

何かを振り切るために

「はぁ、はぁ、はぁ」

気が付くと栞とスケッチに来るいつもの公園

私は噴水の側に座るとある一人の人物を頭の中から振り払い始める

・・・・・・・

・・・・・

・・・



どれくらいの時間が経ったのだろう

あたりは薄暗くなり始めている

でも、やっぱり振り払うことはできない

「ダメね…明日から相沢君と栞にどんな顔すればいいんだろ?」

自問自答…答えなど返ってくるはずが無い

「俺は、笑ってて欲しいな」

無いはずの返事

私は驚きつつ、声の主を確認する

「相沢君!?」

「よっ」

どどど、どうしてここに相沢君が!?

「まったくどうしちまったんだ?」

「・・・」

どうして忘れようとしてるときに現れるのよっ!

「俺には言ってもらえないのか?」

どうして、どうしてそんな笑顔を向けるのっ!

「それ以上私の心に踏み込んでこないでっ!!」

「えっ?」

私は叫ぶと同時に走り出す

逃げるように

絶望と、かすかな希望を胸に

「待てよっ!」

相沢君が追いかけてくる

「人の気も知らないでっ」

「きゃっ」

逃げてたけど、私は公園の段差でつまずいてしまう

ずしゃぁ!!

「…大丈夫か?」

また、優しい笑顔…

「そんな笑顔で見ないでよ。 そんな笑顔で見られたら私、私」

…頬に熱いものが流れていくのがわかる

「お、おい香里…」

「バカ…」

「バカ、バカ、バカ、バカ、バカ…」

ふわっ

「えっ!?」

あ、相沢君?

ちょっと何してるのよ

人に抱きついて…

ぎゅっ!

「何だよ、水臭いじゃねぇか。 辛いことがあったら何でも言ってくれよ」

「バカ、バカ、バカ…」

「頼りないかも知れないけどよ。 できることなら何でも力になるからさっ」

ダメ、いくら押し込めようとしても言葉があふれ出てくる…

「相沢君…」

「好き」

「好きっ! 好きで好きで、大好きなのっ!! でも、栞がいて相沢君も栞と仲がいいし」

「・・・」

「私は栞に幸せになって欲しいだから…だから…」

私は泣きながらせき止めていた全てを相沢君にぶつける

「それで香里が辛い思いしてどうするんだよ!」

「えっ!?」

「栞はそんなことを望んでいると思うか?

違うだろ

栞に幸せになって欲しいって香里の気持ちは良くわかる

でもな

栞の幸せは香里の幸せでもあるんだぞ

どっちかが辛い思いをしちゃ意味が無いんだ

ダメなんだよっ!」

「それに、俺も香里のことが大好きだからな…」

「あ、相沢君…でも、でも栞は?」

「栞は、俺のことを命の恩人だとは思っているが恋愛対象ではないさ」

「どうゆうこと?」

「前、栞に話を聞かされてな『大好きですけど…憧れ、手の届かない人ですよ。 祐一さんは』ってな」

「それじゃぁ、それじゃぁ」

「あぁ、香里は何にも気にすることは無いんだ」

「相沢君っ!!」

止まりかけていた涙がまた私の頬を濡らす

「私は相沢君の隣にいてもいいのね?」

「あぁ、ずっといてくれ」

「嬉しい…嬉しい!!」

今度は私のほうから相沢君に抱きつく

「ずっと、ずっとな」






















エピローグ


「泣き止んだか?」

「うん…」

…私、告白しちゃったのよね…

しかも、相沢君も好きだって言ってくれたし

今日からカップルってことになるのかしら…?

「じゃぁ、冷えてきたしそろそろ帰るか? 栞も心配してるぞ」

「そうね」

ふふっ ちょっと甘えちゃおっ

「つぅ」

「どうした?」

「足をね、また挫いちゃったみたい」

「ふぅ、しょうがねーなぁ」

「また背中におぶってくれるのかしら?」

「あぁ。ほらっ乗れよ」

「ふふっ、ありがとう」

「今日はえらく素直だな」

私って普段はそんなに素直じゃなかったかなぁ?

「そ、そんなことないわよ」

「ははっ、よし乗ったか?」

「えぇ」

「じゃぁ帰るか」

「うん」

やっぱり、暖かいな…とても落ち着く

私は背中で揺られながら家路へとつく

「ねぇ? 私たちって今日からカップルになるのかしら?」

「なっ………そうだよっ」

「嬉しい」

「…そっか、へへっ」

「ん?」

「俺もだ」

「良かった」





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